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2400メートルを経験している馬が少ないのはオークスと同じでも、オークスが概してゆるい流れなのに対し、ダービーは流れがまちまちなのだ。
最高の舞台ということで、俗にいわれるテレビ馬が時々出現して大逃げを打ち、ペースを狂わせることがあるからだ。
乗るうえでのポイントは、やはり流れに乗るということ。
ペース、馬の個性に応じて適切なポジションを占め、ムダなエネルギーを消耗せずに走らせることだ。
昨年のダービーは、K騎手のサクラチョノオーが勝ち、ボクが乗ったメジロアルダンはクビ差2着に敗れた。
K騎手は実にみごとなレースをしたと思う。
好枠(5番)をうまく生かし、先団のもまれないところに位置してスムーズにレースを進めていた。
皐月賞で敗れた(3着)ことにより、全体のマークが緩和されたこともあったろうが、近年のダービーで昨年のK騎手ほど流れに乗せた騎手はいないだろう。
ボクのアルダンはチョノオーの後ろにいたが、3コーナーでやられたと感じた。
技術の向上はレースに数多く乗ることだろう。
極力流れに乗ってレースを進めるつもりである。
ボクのデビュー以来の通算騎乗数はあと13回で1万回になるそうだ。
今週中に区切りがつくかどうか、現時点では微妙だが、タイミング良くダービーを勝てれば、これ以上うれしいことはない。
(5月23日)今年のダービーは残念ながら観戦にまわった(アンシストリーが故障で回避)。
ダービーだけでなく、ジョッキーはレースに乗らなければダメである。
ボクはあと1回で通算騎乗数が1万回になるが、大台を超えている人はG騎手とM騎手の2人しかいない。
今、ボクがある程度活躍できるようになっているのは、若い頃から数を乗ってきたからだと思う。
競走馬同様、ジョッキーにとってもレースと調教は別物である。
いくら調教で数乗っても実戦での勝負勘を養うには限界がある。
ボクは環境に恵まれ、新人の頃から騎乗数が比較的多かった。
当時はさすがにチャンスのある馬にはそれほど乗せてもらうことができなかったが、多くのレースに出場できたということが大きなプラスになった。
1番大事な流れに乗るということ、また微妙なかけ引きというのは、実際のレースでしか体得できないものなのだ。
あえていわせてもらえば、中央競馬の場合、騎乗機会が週2日というのは少ないと感じている。
レースに乗っていてこれだという上達への何かを得ることがしばしばあるが、次の競馬まで間があくと、その感触を忘れてしまうことが多い。
車を運転する人ならおわかりだろう。
運転にブランクがあると、久しぶりに乗る時、頭ではわかっていても体がいうことをきかず、ハンドルさばきがぎこちなくなってしまう。
これと同じような理くつである。
もちろん、いい馬に乗るということも重要になる。
上達への1番の早道は、レースに多く出場し、しかも能力のある馬に乗るということ。
ボクの場合、シンボリルドルフに巡り合えたことが桁ちがいに大きな財産になった。
パーフェクトなルドルフに乗ったことによって、他の馬に騎乗した場合、どんな要素が不足しているのかがわかるのは切り札といってもいいだろう。
不足している要素を考えて、それなりの策を立てることができるというわけだ。
簡単なことのように思われるかもしれないが、何が足りないのかというのは、最高のレベルの馬を知っていないと、はっきりはわからない・今のボクがあるのは数多い実戦の騎乗とルドルフとの出合いだと思っている。
どこまで行ってもパーフェクトにはたどりつけないだろうが、それを目指して今後も乗り続けるのみ。
おのずと結果は出るものだと信じている。
(5月30日)中央競馬の騎手で大台を突破しているのは過去2人。
ともに現役のM騎手(6月1日現在3259回)、前半戦の悼尾を飾るのは阪神競馬場で行われる宝塚記念。
昭和60年のシンボリルドルフの時はスクラッチ(取り消し)だったし、ボクにはまだ縁のないGIレースである。
今回の騎乗馬はキリパワー。
能力的には十分好勝負になる馬なので、今年こその気持ちでいる。
阪神は非常にクセがあるトラックである。
1700メートル余りと1周の長さ自体が短いうえに、コーナーがきつめ。
さらに3、4コーナーの間に310メートルほどの直線があるといった、オニギリ型の変則コースだ。
昔、慣れないジョッキーが3、4コーナー中間の直線を最後の直線と勘ちがいしたことがあるという。
信じられない話に聞こえるかもしれないが、何が起こるかわからないのが、あるいは何が起きても不思議でないのがいまの世の中だ。
ジョッキーだって例外ではない。
アメリカの偉大なS騎手でさえ、1957年、ギャラントマンで出場したケンタッキー・ダービーで残り16分の1マイル(約100メートル)を示す標識をゴール・ポストとまちがえて一度追うのをやめたことがある。
その凡ミスで、結局、アイアンリージをハナ差捕らえることができず、涙を飲んだのは有名な話だ。
G騎手(10851回)だが、昭和32年デビューの前者は30年目の61年、37年デビューの後者は26年目の62年に1万回に到達。
42年デビューのO騎手は23年目と最短記録になる。
かくいうボクもアメリカで騎乗した際、ゴール・ポストを危うくまちがえそうになった経験がある。
この時はすんでのことに手綱をしぼりそうになったが、ヒヤ汗ものだった。
おそらく心のどこかにスキがあったのだろうと思う。
話がそれてしまったが、阪神競馬場のようなややこしいコースでは、少しでもスキをみせると、何かに足元をすくわれる危険性がある。
阪神のGIレースに縁はないが、ボク自身は決して苦手意識を持っているわけではない。
変則コースだけに、馬は器用さがあるタイプが断然有利だろう。
キリパワーは器用さを備えているといっていい。
このあたりはパーソロンの良質産駒ならではの持ち味だろう。
中間の調教で何度か乗って受けた感触は、ずんぶん動かないな、ということ。
パーソロンをテーマにした時、調教で動かなくても実戦で変わる。
いってみればいいうそをつくタイプが多いとしたが、キリパワーもキャリアを積んで、よりパーソロンの特徴が出てきたのではないか。
若い頃、体質の弱さを重視して、ゆっくり仕上げてきただけに、まだまだ上積みは十分あるはずだ。
2500メートルの目黒記念を勝ってはいるが、1300メートルの方が戦いやすいタイプでもある。
ボクがゴール・ポストをまちがえない限り、好勝負になると信じて乗りたい。
(6月6日)東京VRで1着失格。
3月12日の阪神大賞典(スルーオダイナで2着失格)で騎乗停止処分を受けたばかりである。
特例があり宝塚記念をはじめとする阪神競馬で乗ることができたが、期待の大きかったキリパワーがダートのような馬場状態にいつもの軽快さを封じられて6着。
帰路は実につらかった。
一瞬、騎手をやめたいくらいの気持ちにさえなったものだ。
スルーオダイナの時とちがい、今回のカネヤマトウショウではブロンズターフ(繰り上がり3着)の進路を妨害したとは思わずに乗っていた。
コースの出入り口に向かう際、電光掲示板の審の文字が目に入り「いったい何だろう」と不思議に感じたほどである。
だが、検量室に戻ってボクが審議の対象になっているのを知り、がく然とした。
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